宗教法人

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宗教法人制度

概要

1 宗教法人

宗教法人とは、宗教法人法によって法人となった宗教団体をいいます。
我が国では、憲法第20条第1項によって、信教の自由が保障されており、宗教法人でなくても、宗教活動を行うことは自由です。
しかし、同じ信仰の人たちが集まって、集団が形成されますと、個人のものと区別された共有財産が生じ、それを管理・運営する必要性が生じてくるのです。
そこで、宗教法人法では、第4条第1項において、信仰を同じくする集団のうち一定のものを「宗教団体」とし、法人格を付与したのです。
宗教法人法第2条では、宗教法人になれる宗教団体を次のように定めております。
すなわち、宗教団体とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする以下に掲げる団体をいいます。
@ 礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体
A @に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体
一般的に、@の宗教団体は単位宗教団体と呼ばれ、これが法人となったものは単位宗教法人と呼ばれており、Aの宗教団体は包括宗教団体と呼ばれており、これが法人となったものは包括宗教法人と呼ばれています。
また、単位宗教法人のうち、包括宗教法人に包括されている宗教法人は被包括宗教法人、包括されていないそれは単立宗教法人と呼ばれています。
次に宗教法人も公益法人になります。
宗教法人法第6条において、宗教法人は公益事業を行うことができ、さらに、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業も行うことができることとされています。
宗教法人以外の公益法人としては、いわゆる民法法人と呼ばれる社団法人や財団法人、学校法人、社会福祉法人といったものがあります。
民法法人は、平成20年12月1日より5年間で、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人の4つに分かれることとなりました。

2 宗教法人のメリット・デメリット

宗教法人にすることのメリットとしては、@所有財産を宗教法人名義にできること、すなわち、相続を経ずに済みますから財産維持ができること、A各種税制上の恩恵が受けられることがあります。
デメリットとしては、@世俗的事務取扱機関を設けなければならないこと、A一定の管理運営義務が生じることなどがあります。

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設立

1 概要

宗教団体が宗教法人になるには、宗教団体としての活動実績があることを前提に、その規則について所轄庁の認証を得て、登記することが必要です。
所轄庁とは、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事をいいます。
ただし、従来は、包括宗教法人で、被包括宗教法人が他の都道府県内にある場合にのみ所轄庁は文部科学大臣でしたが、平成7年の宗教法人法改正によって、次の宗教法人の所轄庁も文部科学大臣となりました。
@ 他の都道府県内に境内建物を備える宗教法人
A @以外の宗教法人であって@の宗教法人を包括するもの
B @Aのほか、他の都道府県内にある宗教法人を包括するもの
なお、改正前宗教法人法において、旧法所轄庁が都道府県知事である宗教法人は、改正宗教法人法公布日(平成7年12月15日)において他の都道府県内に境内建物を備えているときは、同日から起算して6か月以内に、所定の事項を記載した「境内建物関係書類」を添えて、その旨を旧法所轄庁を経由して、文部科学大臣に届け出なければなりません。
さらに、前述の届け出をした宗教法人で、施行日(平成8年9月15日)において、滅失その他の事由により他の都道府県内に境内建物を備えないこととなったときは、施行日から起算して6か月以内に、その旨を旧法所轄庁を経由して、文部科学大臣に届け出なければなりません。
また、旧法所轄庁が都道府県知事である宗教法人で、施行日において他の都道府県内に境内建物を備えているときは、施行日から起算して6か月以内に、当該他の都道府県内の境内建物関係書類を添えて、その旨を旧法所轄庁を経由して、文部科学大臣に届け出なければなりません。
設立のステップは、次のとおりです。
第1ステップ……規則を作成し、設立会議の議決を経る
第2ステップ……包括宗教団体の承認(単立法人は不要)
第3ステップ……設立公告
第4ステップ……所轄庁に規則の認証申請
第5ステップ……所轄庁の審査・認証後、所轄庁から規則認証書、認証した旨を付記した規則及び謄本交付
第6ステップ……宗教法人設立登記(交付日から2週間以内)
第7ステップ……所轄庁へ登記簿謄本を添えて宗教法人成立届提出

2 規則

宗教法人設立に当たっては、まず規則を作成しなければなりません。 これは、法人の管理運営を行うための組織、根本原則を定めたものであり、日々の管理運営は、この規則に従って行われます。
この規則については、宗教法人法第12条第1項において、次の絶対的記載事項がありますから、もれなくこれらを規定します。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 設立しようとする宗教法人を包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
五 代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員及び仮責任役員の呼称、資格及び任免並びに代表役員についてはその任期及び職務権限、責任役員についてはその員数、任期及び職務権限、代務者についてはその職務権限に関する事項
六 責任役員以外の議決、諮問、監査その他の機関がある場合には、その機関に関する事項
七 宗教法人法第6条の規定による事業を行う場合には、その種類及び管理運営に関する事項
八 基本財産、宝物その他の財産の設定、管理及び処分、予算、決算及び会計その他の財務に関する事項
九 規則の変更に関する事項
十 解散の事由、清算人の選任及び残余財産の帰属に関する事項を定めた場合には、その事項
十一 公告の方法
十二 宗教法人法第12条第1項第5号から第11号までに掲げる事項について、他の宗教法人を制約し、又は他の宗教団体によって制約される事項を定めた場合には、その事項
十三 前各号に掲げる事項に関連する事項を定めた場合には、その事項
設立においては、規則案が作成されましたら、団体関係者によって、設立の規則案の承認及び役員就任予定者の任命等に関する設立会議を開催し、議決を経ることが必要です。

3 設立公告

宗教法人の設立に当たっては、認証申請の少なくとも1か月前に信者等に対して、規則の案の要旨を示して、宗教法人を設立する旨を公告しなければなりません。
具体的な公告方法は、機関誌への掲載などによって行われます。
なお、設立公告を怠りますと、公告をしたことを証する書類が提出できないこととなり、書類不足で、申請を受理できず認証されないことになります。

4 規則の認証申請

宗教法人設立のための重要なものとして、規則の認証申請があります。
これは、次の書類を所轄庁に提出することによって行います。
@ 認証申請書
A 規則2通
B 当該団体が宗教団体であることを証する書類
C 公告をしたことを証する書類
D 認証の申請人が当該団体を代表する権限を有することを証する書類
E 代表役員及び定数の過半数に当たる責任役員に就任を予定されている者の受託者

5 規則の認証

規則の認証申請があった場合において、所轄庁は、申請書類の形式が不備でなければ受理します。
そして、所轄庁は、3か月以内に、次の要件を具備しているか否かを審査し、具備していれば認証、していなければ不認証とすることになります。
@ 当該団体が宗教団体であること
A 当該規則が宗教法人法その他の法令の規定に適合していること
B 当該設立手続が宗教法人法第12条の規定に従ってなされていること
もっとも、所轄庁が認証審査を行うに当たっては、たんに形式だけを審査するのではなく、その記載内容が真実のものであるか否かも重要なことです。 もし、疑義がもたれますと、その疑義を明らかにするため、所轄庁は確認のための調査をすることができます。
なお、所轄庁は、不認証の決定をする場合には、あらかじめ申請者に対して相当の期間内に意見を述べる機会を与えなければなりません。

6 設立登記

規則認証後、宗教法人は登記が成立要件ですから、登記します。
設立登記は、規則認証書交付日から2週間以内に、次の事項を主たる事務所の所在地においてしなければならず、従たる事務所もあれば、主たる事務所での設立登記後2週間以内に、従たる事務所の所在地において同様にしなければなりません。
@ 目的
A 名称
B 事務所
C 包括宗教団体の名称及び法人格の有無(単立法人は不要)
D 基本財産の総額
E 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
F 規則で不動産又は財産目録に掲げる宝物の処分又は担保提供に関する事項を定めた場合にはその事項
G 規則で解散事由を定めた場合にはその事由
H 公告方法
なお、設立登記の際には、次の添付書類が必要となります。
@ 規則の謄本
A 認証書の謄本
B 代表役員の選任を証する書面及び代表役員の就任承諾書(一定の場合)
C 責任役員の選任を証する書面

7 成立届の提出

設立登記が完了したら財産目録を作成し、所轄庁に、遅滞なく、登記簿謄本を添えて、宗教法人成立届を提出します。

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機関運営

1 概要

宗教法人を代表し、その事務を総理する者が、代表役員です。 代表役員は、必要常置の執行機関であり、通常責任役員の互選によって一人選ばれます。
責任役員も必要常置の機関であり、宗教法人の事務を決定する意思決定機関です。 責任役員は、必ずしも宗教法人の機関としての定めは有りませんが、通常、責任役員会を組織し、会議を開いて意見を述べ、意思調整を図り、事務を決定していきます。
宗教法人の役員が何らかの理由で欠けたり、長期間に亘って職務遂行が不能の場合に置かれる代行機関を代務者といいます。代務者には、代表役員代務者と責任役員代務者の2つがあります。
次に、代表役員や責任役員と宗教法人との利害が対立して、利益が相反する事項についての決定について、代表役員や責任役員に代わって選任される場合があり、これが仮代表役員又は仮責任役員と呼ばれています。 当該機関は、一時的・臨時的な機関といえます。
最後に、監査機関として監事を置くか否かは、宗教法人の自主性に委ねられており、任意となっています。

2 代表役員

(1) 地位と資格
代表役員とは、宗教法人を代表し、その事務を総理する必要常置の機関です。
代表役員は、中枢の機関であり、登記事項にもなっており、代表役員を通して行われた行為は、その権限の範囲内の行為は宗教法人に帰属し、逆に第三者に損害を与えれば、宗教法人は損害賠償責任を負うこともあります。
次に、宗教法人法が定めている代表役員の資格として次のものがあります。
@ 以下の役員の欠格事項に該当しないこと
  (責任役員、代務者、仮代表役員、仮責任役員も同様)
 イ 未成年者
 ロ 成年被後見人又は被保佐人
 ハ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
A 責任役員のうちの1人であること
また、寺院に多いのですが、代表役員も世襲制にしているところがあり、公益性の高い宗教法人としてはあまり好ましいことではありませんが、やむを得ないこととして容認されています。

(2) 職務権限
代表役員の職務権限は、対内的には宗教法人の事務を総理し、対外的には宗教法人の行為を代表することです。
代表役員の権限の範囲は、宗教法人として目的を達成するために必要な一切の事務に及び、次のようにたいへん大きな権限が与えられています。
@ 規則変更、合併、任意解散の認証申請
A 財産処分等及び公告
B 公益事業その他の事業の実施
C 財産目録等の作成及び備付け
D 各種登記申請
E 登記届出
F 清算人への就任
G 破産宣告申請
なお、一定の事項については、責任役員会の議決や諮問機関の議決が必要です。

(3) 任期等
代表役員の任期は、宗教法人法上、特に制限はなく、各宗教法人の実情にあった適切な期間を定めることになります。
また、@代表役員の任期満了、A欠格条項に該当、B代表役員の死亡、C宗教法人の解散といったことは、代表役員の退任事由となります。

(4) 罰則
代表役員(代務者、仮代表役員、清算人も同様)が、次のような行為をしたときは、罰則が課せられます。
@ 所轄庁に対して不実の記載をした書類を添えて認証申請をしたとき
A 登記に関する届出などを怠り、又は不実の届出をしたとき
B 宗教法人法第23条の規定に違反して公告をしないで同条各号の行為をしたとき
C 宗教法人法第25条第1項若しくは第2項の規定に違反して書類若しくは帳簿の作成若しくは備付けを怠り、又は不実の記載をしたとき
D 宗教法人法第25条第4項の規定による書類の提出を怠ったとき
E 破産宣告の請求を怠ったとき
F 清算手続における債権申出の公告又は破産宣告の請求をなした旨の公告を怠り、又は不正の公告をしたとき
G 解散又は清算に関する裁判所の検査を妨げたとき
H 登記を怠り、又は不実の登記をしたとき
I 公益事業以外の事業の停止命令に違反して事業を行ったとき
J 宗教法人法第78条の2第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき

3 責任役員

(1) 地位と資格
責任役員とは、宗教法人の管理運営機関の1つで、必要常置機関であり、宗教法人の事務に関し審議をする意思決定機関です。
宗教法人法上、1つの宗教法人には3人以上の責任役員を置くものとされており、規則に特に定めがなければ、宗教法人の事務は責任役員の定数の過半数で決定され、代表役員もこの責任役員の意思決定に基づいて、事務を執行することになります。
責任役員の資格については、代表役員と同様ですが、宗教法人の公正な運営のためにも、一定の範囲の親族が一定割合を超えない配慮が大切です。

(2) 職務権限
宗教法人法上必ずしも定めはありませんが、責任役員は、責任役員会を組織し、そこで意見交換、意思調整を図り、意思決定をしていくことが基本的在り方とされています。
責任役員会の招集は、特別の定めがなければ、代表役員が行うこととされています。
そこで、責任役員と責任役員会との職務権限とは、同義であり、次のようなものがあります。
@ 予算編成
A 決算承認
B 歳計剰余金の処置
C 特別財産及び基本財産の設定及び変更
D 不動産及び重要な動産に係る取得、処分、担保提供、その他重要な行為
E 主要な境内建物の新築、改築、増築、移築、模様替え及び用途変更等
F 境内地の模様替え及び用途変更等
G 借入及び保証
H 事業の管理運営
I 規則の変更並びに細則の制定及び改廃
J 合併並びに解散及び残余財産の処分
K その他宗教法人の事務のうち、重要な事項

(3) 選任等
責任役員の選任については、代表役員のそれと異なり特に規定がないため、各宗教法人ごとに規則に定めておく必要があります。
責任役員の解任については、代表役員と同様です。

4 代務者

(1) 地位と職務権限
代務者とは、宗教法人の役員が欠けた場合などに置かれる代行機関のことで、これには代表役員代務者と責任役員代務者の2つがあります。
宗教法人法上、代務者の置かれるケースとして、次の2つの場合が想定されています。
@ 代表役員又は責任役員が死亡その他の事由により欠けた場合
A 代表役員又は責任役員が病気などの事由により3か月以上その職務をできない場合
また、代務者の職務権限は、特に規則に制限規定が定められていなければ、役員と同様と考えられます。

(2) 選任等
代務者の任免は、各宗教法人ごとに規則に定められます。
また、代務者は臨時的機関のため、存置理由がなくなれば、当然退任することになります。

5 仮代表役員・仮責任役員

(1) 地位
仮代表役員とは、代表役員と宗教法人との利益が相反する事項に関する行為がされる場合に、当該代表役員に代わって選任された者をいいます。
この利益相反事項には、例えば次のようなものがあります。
@ 宗教法人と代表役員相互間の財産の有償譲渡
A 代表役員が宗教法人から金銭の貸付けを受けること
B 代表役員個人の債務に対する宗教法人の財産の担保提供
C 代表役員の個人事業への宗教法人の財産の無償利用
一方、仮責任役員とは、宗教法人と責任役員との間で特別の利害関係がある事項の議決について、当該責任役員の議決権行使が制限され、それによって責任役員会の運営に支障をきたす場合に、当該責任役員に代わって選任された者をいいます。
ここで、特別の利害関係がある事項とは、利益相反事項を含むより広い概念であり、例えば次のような事項も含まれます。
@ 当該責任役員の解任に関する事項
A 宗教法人と責任役員との間の訴訟遂行に関する事項
B 特定の責任役員が、宗教法人職員として受ける報酬等に関する事項

(2) 職務権限
仮代表役員は、利益相反事項に関して宗教法人を代表して事務処理をする権限を持ち、仮代表役員は、特別の利害関係がある事項について、当該責任役員に代わってその職務を行う権限を持っています。
また、利益相反事項に関して、仮代表役員を選任せず、当該代表役員がした行為の効力については、権限外の行為ですから無効となると思われますが、後で責任役員会等で追認すれば有効となるでしょう。
なお、当該違反行為をした代表役員については、損害賠償責任などを負うことになるでしょう。

(3) 退任
仮代表役員にしろ、仮責任役員にしろ、当該権限事項に関する処理が終了すれば、任務も終了し、当然に退任することになります。

6 監査機関

(1) 地位と資格
宗教法人の監査機関は、これまで述べてきた機関と異なり、その設置が宗教法人の自主性に委ねられている点で任意機関と呼ばれています。
ここで、監査機関とは、宗教法人の事務執行を監督する機関のことをいいます。
よって、監査機関の資格としては、中立性が要求され、代表役員等と親族関係や特別の利害関係がないことなどが要求され、できれば公認会計士等の外部の専門家に委託することが好ましいと思われます。

(2) 職務権限
監査機関の職務権限は、宗教法人の事務執行を監督することですが、具体的には次の2つのことをいいます。
@ 宗教法人の財産及び収支の状況の監査(会計監査)
A 事務執行状況の監査(事務監査)

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事務運営

1 備付書類・帳簿

宗教法人法第25条第2項において、宗教法人の事務所には、次の書類や帳簿を常に備付けなければならないこととされています。
@ 規則及び認証書
A 役員名簿
B 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
C 境内建物(財産目録に記載されているものを除く)に関する書類
D 責任役員その他規則で定める機関の議事に関する書類
E 事務処理簿
F 公益事業又は公益事業以外の事業を行う場合には、その事業に関する書類
なお、宗教法人法上は規定はありませんが、@規則の施行細則、A登記簿謄本、B信者名簿も備付けておいた方がよいでしょう。

2 公告

(1) 目的
公告制度は、認証制度及び責任役員制度と並んで、宗教法人法において特徴となっているものです。
公告の目的とするところは、信者等に対して法人運営の実態を明らかにし、了知せしめることにあるため、信者等から、公告の趣旨に異議申出があれば、素早く適切な対応が必要となります。

(2) 公告方法
一般に公告の方法は、新聞紙上又当該宗教法人の機関誌に掲載、当該宗教法人の事務所の掲示場に掲示し、その他信者等に周知させるのに適当な方法でします。
すなわち、公告の方法は、当該宗教法人の規模、地域、形態などに従って、その効果が最も出やすい方法によりします。
また、公告の時期については、宗教法人法において、「二月前」とか「一月前」とか定められておりますので、十分注意が必要です。

(3) 公告が必要な場合
宗教法人法上、公告が必要な場合は、後記の表のとおりです。
なお、認証の申請とは、公告をしたことを証する書類を添付しなければなりませんが、公告を怠れば、所轄庁は、受理せず認証に至らないことになります。
また、公告をしなかったり、公告に違反してなされた財産の処分等の行為の効力は、無効となります。

場合 公告事項 公告対象 据置期間 公告者
設立 @ 規則案の要旨
A 設立しようとする旨
信者等 1か月 設 立
代表者
財産処分
担保提供
@ 処分物件、価格、相手先
A 処分目的、処分方法など当該行為をする旨
同上 同上 代表役員
(単立法人のみ)
借入・保証 @ 借入金額・保証債務額
A 借入目的・保証理由
B 借入条件・保証条件など
同上 同上 同上
境内建物の
新築等
@ 新築等をする建物の名称、建坪、理由など
A 当該行為をしようとする旨
同上 同上 同上
境内地内の
著しい模様替
@ 模様替の理由、面積、経費など
A 当該行為をしようとする旨
同上 同上 同上
境内建物、
境内地の
用途変更
@ 用途変更の概要、理由、経費など
A 当該行為をしようとする旨
同上 同上 同上
規則変更
(一定の場合)
@ 規則変更案の要旨
A 当該行為をしようとする旨
同上 2か月 代表役員
吸収合併 当該行為をしようとする旨
1)合併契約案の要旨
同上 同上 同上
2)催告に関する事項 債権者 同上 同上
新設合併 @ 当該行為をしようとする旨
A 新設法人の規則案
B 上記吸収合併の1)及び2)の事項
信者等 同上 各宗教法人から
の規則作成者
被包括関係の
設定・廃止を
伴う合併
@ 吸収合併の場合…上記規則変更と吸収合併の公告
A 新設合併の場合…上記規則変更と新設合併の公告
     
解散 解散する旨 信者等 2か月 代表役員

3 規則変更

(1) 変更手続
宗教法人における規則は、宗教法人の業務運営の拠り所となるものですが、それが実態に合わなくなったりした場合は、以下のステップによる変更手続が必要となります。
第1ステップ…宗教法人内部の変更手続(責任役員会の議決等)
第2ステップ…所轄庁と規則変更の認証申請
第3ステップ…認証後、法務局で変更登記
第4ステップ…登記終了後、所轄庁に届出
ここで、規則変更の認証申請に必要な書類と所轄庁の認証審査事項は、次の表のとおりです。

必要書類 審査事項
@ 規則変更認証申請書
A 変更しようとする事項を示す書類2通(登記事項であるときは3通)
B 規則で定められた手続を経たことを証する書類(責任役員会の議事録等)
@ 変更事項の宗教法人法などの規定への適合性
A 変更手続の宗教法人法第26条への準拠性

また、規則変更の際には、次の点の検討が必要かと思われます。
@ 宗教法人法などの法令の規定に違反していないか
A 規則の内容と矛盾していないか
B 規則を変更しようとする宗教法人に、包括する法人や団体がある場合、その包括法人や団体の規則などに違反していないか
C 変更する事項が遵守可能なものであるか
なお、規則変更の効力発生は、所轄庁の認証書到達時からです。

(2) 認証

イ 被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更
宗教法人にそれを包括する宗教団体(法人)がある場合には、被包括宗教法人の規則には、その包括する宗教団体の名称及び宗教法人、非宗教法人の別を必ず規定することになっています。
そこで、被包括関係を設定又は廃止する場合には、次の規則変更手続が必要となります。
@ 規則で定められた規則変更に必要な機関の議決・承認
A 信者等に対し規則で定められた公告
B 設定の場合、被包括関係を設定しようとする宗教団体の承認
  廃止の場合には、廃止しようとする宗教団体へのその旨の通知
C 公告期間終了後2か月経過後の認証申請書の提出
D 認証後の所轄庁への届出

ロ 合併による規則変更
吸収合併の場合において、存続する宗教法人の規則変更の必要が生じたときには、通常の規則変更手続のみならず、全体として合併の手続によることが必要です。

ハ 住居表示の実施に伴う規則の変更
住居表示に関する法律による住居表示の実施による所在地の住所変更があった場合には、認証変更手続は不要で、@当該宗教法人の規則変更、A住居表示変更の旨の市町村長の証明書を付して変更登記申請、B登記後、所轄庁へ届出をすることになっています。

4 登記

宗教法人においても、宗教法人自体の存在や財産関係の状況等を、一般に公開し公示すること、すなわち登記が必要な場合があります。
宗教法人の登記には、法人登記と不動産登記の2つがあります。
法人登記は、宗教法人の事務所の所在地を管轄する法務局で、不動産登記は、不動産の所在地の管轄する法務局でそれぞれ行います。
まず法人登記についてですが、その概要は次の表のとおりです。

名称 期間と場所 添付書類
設立の登記 @ 主たる事務所の所在地…認証書交付後2週間以内
A 従たる事務所の所在地…主たる事務所の登記後2週間以内
@ 所轄庁の証明のある認証を受けた規則の謄本
A 代表権を有する者の資格を証する書類
従たる事務所
の新設登記
@ 主たる事務所の所在地…2週間以内
A 従たる事務所及びその他の従たる事務所の所在地…3週間以内
@ 登記の事由を証する書類
事務所移転
の登記
@ 主たる事務所を移転したときの主たる事務所の新旧所在地…2週間以内
   従たる事務所の所在地…3週間以内
A 従たる事務所を移転したときの主たる事務所の新旧所在地…2週間以内
   従たる事務所の旧所在地…3週間以内
   新所在地…4週間以内
@ 登記の事由を証する書類
変更の登記 @ 主たる事務所の所在地…2週間以内
A 従たる事務所の所在地…3週間以内
@ 登記の事由を証する書類
合併の登記 @ 主たる事務所の所在地…合併認証書交付後2週間以内
A 従たる事務所の所在地…合併認証書交付後3週間以内
@ 吸収合併…変更の登記と同様
   新設合併…設立の登記と同様
A 債権者に対して公告及び催告をしたことを証する書類
B 異議を述べた債権者があるときは、これに弁済し若しくは担保に供し、または信託したことを証する書類
C 解散法人の登記簿謄本
解散の登記 @ 主たる事務所の所在地…解散に関する認証書交付日又は解散事由発生日から2週間以内
A 従たる事務所の所在地…解散に関する認証書交付日又は解散事由発生日から3週間以内
@ 解散の事由を証する書類
清算結了
の登記
@ 主たる事務所の所在地…清算結了日より2週間以内
A 従たる事務所の所在地…清算結了日より3週間以内
礼拝用建物及
び敷地の登記
任意申請 @ 礼拝の用に供する建物又はその敷地である旨を証する書類

次に、不動産登記を行うには、次の書類が必要です。
@ 申請書
A 登記原因を証する書面
B 登記義務者の権利に関する登記済証
C 登記原因につき第三者の許可、同意又は承諾を要するときはこれを証する書面
なお、次の場合には、登記後遅滞なく、登記簿謄本を添えて、その旨の所轄庁に届け出なければなりません。
@ 所轄庁の規則認証後、宗教法人の登記をしたとき
A 代表者の変更など所轄庁の認証にかかわらず登記事項について変更の登記をしたとき
B 破産以外の法定解散による解散の登記をしたとき
C 礼拝用建物及び敷地の登記をしたとき

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合併

1 意義

合併とは、2つ以上の宗教法人が1つの宗教法人になることをいいます(任意団体と宗教法人とが1つになる場合を除く)。
合併には、合併する宗教法人の一方が存続したほうがこれに併合される場合と、両宗教法人が消滅して新たに別の宗教法人を創設する場合とがあります。 前者を吸収合併、後者を新設合併といいます。
なお、吸収合併の場合には、合併後存続する宗教法人以外の宗教法人は、すべて解散することになります。

2 手続

吸収合併、新設合併ともまず次の手続を実施しなければなりません。
@ 規則で定める合併手続の実施(総代会や責任役員会の議決など)
A 合併しようとする旨の公告
B 財産目録及び貸借対照表の作成
C 債権者に対する公告と催告
D 合併により被包括関係の設定又は廃止をする場合の手続の実施
次に、吸収合併に伴い、存続する宗教法人の規則を変更する場合には、その存続する宗教法人の規則で定める変更手続を経て、所轄庁へ合併認証申請を含め認証申請します。
新設合併の場合には、信者等に規則の案を示し、合併の旨の公告をしなければなりません。

3 認証申請

合併手続後は、次の表の書類を添付して、所轄庁の合併の認証申請をします(○は必要書類、△は規則変更が必要となる場合に添付)。

添付書類 吸収合併の場合 新設合併の場合
認証申請書
規則の変更をしようとする事項を示す書類(2通)  
規則(2通)  
合併の決定について規則で定める手続等を経たことを証する書類
合併する旨を公告したことを証する書類
財産目録及び事業の貸借対照表
債権者に対する公告及び催告をしたことを証する書類
債権者のための弁済、担保提供、財産の信託をしたことを証する書類
合併に伴う規則の変更のための手続を経たことを証する書類  
合併によって設立する宗教法人の規則を作成したことを証する書類  
合併によって設立する団体が宗教法人であることを証する書類  
合併により宗教法人を設立する旨の規則案の要旨を示して公告したことを証する書類  

4 認証と登記

認証申請後、所轄庁は、形式的な書類の審査の後、次の事項に関する実質的な審査を行い、認証又は不認証の決定をします。
@ 合併の手続が宗教法人法や規則に従ってなされたか
A 吸収合併により存続する宗教法人が規則を変更しようとする場合の事項、新設宗教法人の規則が、宗教法人法などに適合しているか
B 新設合併により成立する団体が、宗教法人法第2条に定める宗教団体であるか
そして、合併に関する認証書が交付されますと、その受領日から、主たる事務所の所在地においては2週間以内、従たる事務所においては3週間以内に登記しなければなりません。
登記が完了しますと、登記簿謄本を添えてその旨を所轄庁に届出ることになります。

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宗教法人会計

会計規定

1 概要

宗教法人法上の会計に関する規定については、設立時に財産目録を、毎会計年度終了後3か月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならないとされています。
次に、規則上の規定ですが、財産目録及び収支計算書類並びに貸借対照表を作成している場合には、貸借対照表を宗教法人の事務所に備付けなければなりません。
その他の規則上の会計に関する規定としては、次のものがあります。
@ 監査機関がある場合には、その機関に関する事項
A 公益事業その他の事業の管理運営(公益事業以外の事業を行う場合には、収益処分の方法を含む)に関する事項
B 基本財産、宝物その他の財産の設定、管理及び処分、予算、決算及び会計その他の財務に関する事項
次に、財産処分等に関する制約としては、次の場合に公告を要求していることです。
@ 不動産又は財産目録に掲げる宝物を処分し、又は担保に供したとき
A 借入又は保証をしたとき
さらに、基本財産の総額の登記が、設立時及び変更時に必要となります。
宗教法人会計についても、公益法人会計基準のような拠り所となる基準があるかといいますと、昭和46年11月日本公認会計士協会宗教法人会計専門委員会が発表した宗教法人会計基準(案)が、非常に参考になろうかと思われます。 これによりますと、財政的維持と発展とに効果的な情報を提供することを目的とするため現・預金の収支計算を中心として、貸借対照表の正味財産との連係を資金剰余金調整計算書と剰余金処分計算書を設けて調整計算を行うところに特徴があります。
しかしながら、宗教法人会計に関して所轄庁には監督権限はなく、宗教法人側からみれば、所轄庁に対して予算・決算・財産目録などの報告義務もないことから、一般的に宗教法人においては、帳簿・書類の整備に欠ける場合が多いことが指摘されていました。
とはいっても、会計は基本かつ大切なものですから、例えば小規模宗教法人や中規模宗教法人については宗教法人会計基準(案)をそのまま、又はほぼ準拠し、大規模宗教法人については公益法人会計基準なども組み合わせた計算体系を適用すればよいと思われます。
ところが、先般の宗教法人法改正においては、以下の規定が付け加わり、結果として帳簿・書類の整備が不可欠となりました。
@ 信者その他の利害関係人の帳簿・書類閲覧請求権
A 毎会計年度終了後4か月以外に役員帳簿、財産目録、収支計算書、貸借対照表、境内建物に関する書類、収益事業に関する書類の写の所轄庁への提出義務
ただし、当分の間は、公益事業のみを行う宗教法人で、公益事業のみを行う宗教法人で、その一会計年度の収入金額が一定の金額以内の場合には、収支計算書作成が免除されます。
B 収益事業を営まない小規模宗教法人(年間収入8,000万円以下)以外の宗教法人に対する収支計算書の所轄税務署への提出義務

2 会計年度

宗教法人の活動も、営利法人と同様に永遠に続いていくことが前提となっていますが、実際の活動成果は、一年の単位に区切ってみていくことになります。
この期間のことを、会計年度と呼んでいます。
この会計年度は、通常規則に明記されており、4月1日から翌年3月31日までを一会計年度とするところが多いようです。

3 会計区分

宗教法人会計には、「一般会計」と「特別会計」の2つがあります。
特別会計とは、特別な目的のため、一般会計と別個独立して収支計算や財務計算を行っている会計をいいます。 例えば、@境内建物の新築など長期間収入・支出がある場合、A法人税法上の収益事業を行っている場合、B国や地方公共団体から補助金交付をうける補助事業などを行っている場合には、特別会計が設けられています。
したがって、一般会計とは、特別会計が設けられたときの通常の会計をいいます。

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予算管理

1 予算の意義

予算とは、当該年度の宗教法人の活動計画を金銭面から表示したもので、収入予算と支出予算とから成っています。
収入予算は、当該年度の収入の見積りであり、目標です。
一方、支出予算は、代表役員に対する支出の限界の範囲を明らかにするものです。
このように、宗教法人の活動にとって、予算は、その活動範囲を示し、極めて重要なものであり、宗教法人が費消する金員は、すべて予算に基づかなければならないのです。
なお、予算は、規則の記載事項となっている点に留意して下さい。

2 予算編成・決定

予算編成とは、予算書案の作成のことですが、これは毎会計年度開始前(例えば1か月前)に、代表役員の責任において、責任役員会の議決を経て決定されます。
予算編成では、収入及び支出とも実現可能性が大切となりますが、次の点にも留意すべきでしょう。
@ 過去の例
A 物価変動などの社会情勢
B 信者数の増減などの内部事情
そして、収入及び支出の見積りができましたら、会計区分や収支科目の割振りに従って予算書を作成しますが、次の原則に従って下さい。
@ 継続性……毎年度の科目区分や科目内容は同一のものを継続として使用
A 網羅性……収入、支出となるものはもらさずすべて計上
B 開 示……一時借入金限度額や科目間で流用を認める場合は、(注)においてその旨を表示

3 予算の管理

予算の管理は、会計年度中に予算と実績とを比較し、見直していくことによって行われます。
この予算の管理では、@収入予算管理簿、A支出予算管理簿が利用されます。
両管理簿とも科目ごとに作成し、収入については、予算超過については問題ありませんが、その超過額に対する支出権限までは与えられていない点に留意すべきです。
支出については、その支出が宗教法人に必要な本来の支出か否かがポイントです。

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決算

1 概要

決算とは、当該年度の宗教法人の活動を金銭面から表したもので、一年間の収支の結果、年度末の財政状態がどのようなものであるかを示すための会計上の事務手続きであるといえます。
決算の準備作業としては、次のものがあります。
@ 収入予算管理簿・支出予算管理簿の記帳の正確性を確かめ、もう一度、入金伝票・出金伝票や領収証などの信憑書類と突合する
A 科目間違いがないか確認する
B 現金などの手許残高と帳簿残高との一致を確認するため実査を行う
C 現金などについては、期末残高が正しいか否かを確認するため残高証明書を入手する
D その他必要に応じて、突合、実査、確認を行う
具体的な決算手続きが、つぎのステップを踏んで行われます。
第1ステップ……期末試算表及び棚卸表の作成
第2ステップ……決算整理仕訳と精算表の作成
第3ステップ……元入記入の整理と締切り
第4ステップ……仕訳帳の締切り(伝票の場合不要)
第5ステップ……決算書の作成
ここで、宗教法人会計基準(案)の決算書は、@資金収支計算書(収支計算書)、A貸借対照表、B資金剰余金調整計算書、C剰余金処分計算書、D財産目録の5つが示されていますが、宗教法人法における法定書類である財産目録及び収支計算書の他に、貸借対照表ぐらいは作成してもらいたいものです。
また、決算書ができましたら、規則に従い、責任役員会の議決などの決算の承認が必要で、これらの書類は、5年間は保管しておくことが必要です。

2 収支計算書の作り方

収支計算書は、収入予算管理簿・支出予算管理簿より作成されます。

3 財産目録・貸借対照表

財産目録とは、一定時期における宗教法人の有するすべての資産・負債を、その種類ごとに一覧表にしたもので、貸借対照表に類似したものです。
財産目録は、財産管理簿より作成されます。

4 正味財産増減計算書

所轄庁への提出書類ではありませんが、公益法人会計基準では、正味財産増減計算書を作成することが要求されています。
正味財産増減計算書とは、正味財産の増減を表示することにより、収支計算書と貸借対照表とを有機的に結びつける計算書です。
すなわち、取引の中には、資源の増減があり、かつ、非資金資産の増減に関するものや、資金に関係なく非資金資産の増減に関係する取引があり、こうした取引の増減を記録したものが正味財産増減計算書なのです。
公益法人会計基準上の正味財産計算書には、ストック式とフロー式の二種類がありますが、ストック式のように、直接資産・負債の増減を示す方がわかりやすいとされてます。

5 資金剰余金調整計算書

資金剰余金調整計算書とは、収支計算書の資金剰余金に期間的な資金調整項目を加減して、剰余金(不足金)を算出し、期間対応を認識するとともに、有機的に貸借対照表を誘導する計算書です。
資金剰余金調整計算書も所轄庁への提出書類はありません。公益法人会計基準(案)に掲示されています。

6 監査

監査機関については、宗教法人法上、任意機関であるため、設置は強制されていません。
ここで、監査機関の監査には、次の2つの種類があります。
1つ目は、収支計算書などの決算書に基づいて会計事務処理全般について行われる会計監査で、次のポイントについて行われます。
@ 決算書の記載事項の適正性、計算の正確性
A 収支計算書の各科目の金額と収入予算管理簿・支出予算管理簿の各科目の合計金額の一致
B 収入予算管理簿・支出予算管理簿の漏れや計算の正確性の確認
C 科目誤りや一般会計と特別会計の区分の確認など
2つ目は、代表役員等によって執行された事務が、適正か否かを監査する事務監査であり、次のポイントについて行われます。
@ 宗教法人の運営の法令や規則への準拠性
A 公益事業以外の事業の目的適合性など

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財産の管理と処分

1 財産の管理

(1) 概要
宗教法人においても、法定書類として財産目録及び収支計算書が位置付けられているといったように、財産の管理は非常に大切なものといえます。
財産の管理は、種類ごとに財産管理簿を設けて行われ、財産には、現金などの他に、借入金などの負債も含まれます。
そして、財産管理簿をもとに、財産目録は作成されます。

(2) 特別財産の管理
特別財産とは、宝物、什物をいいますが、こうした財産は、金額も比較的高価で、重要性の高いものが多いことから、財産台帳を作成すればよいでしょう。

(3) 基本財産の管理
基本財産の管理は、土地、建物、有価証券、預金などの種類ごとに管理します。
基本財産の総額は、登記事項になっており、その増減があれば、変更登記をする必要があることからいっても、その管理は非常に大切となってきます。
そこで、基本財産の各種類ごとに、財産台帳を作成してください。

(4) 普通財産の管理
普通財産には、現金から始まり各種のものがありますが、土地、建物、有価証券、預金については、基本財産と同様に行えばよいでしょう。

(5) 負債の管理
借入金や預り金などの負債についても、財産台帳を作成し、管理することが望まれます。
また、負債においては、網羅性も重要な管理ポイントとなることを忘れないで下さい。

(6) 物品の管理
ろうそくなどの物品や米などの供物についても、物品受払簿や供物整理簿によってきちんと管理するようにしましょう。

2 財産の処分

(1) 概要
宗教法人の財産は、@特別財産、A基本財産、B普通財産の3つに分けられますが、これらは宗教法人の目的達成のため維持運用されなければなりません。
宗教法人法第23条においては、宗教法人が次のような行為をする場合には、一定の手続きを踏む旨が規定されています。
@ 不動産又は財産目録に掲げる宝物の処分、又は担保提供
A 借入又は保証
B 主要な境内建物の新築、改築、増築、移築、除却又は著しい模様替
C 境内地の著しい模様替
D 主要な境内建物の用途若しくは境内地の用途変更又は宗教法人法第2条に規定する目的以外の目的使用

(2) 手続
宗教法人法第23条の財産処分等を行う場合には、一定の手続をふむ必要があります。
財産に関する事項は、規則の記載事項で、基本的に責任役員会の議決など規則に定められた手続をふまなければなりません。規則の定めがなければ、責任役員定数の過半数で決せられます。
規則で定めた手続後は、各々の行為の少なくとも1カ月前までに、信者等に対して、公告しなければなりません。
もし、境内建物若しくは境内地又は財産目録に掲げる宝物の処分について、前述の手続を怠りますと、当然処分は無効になります。
また、手続を怠って財産の処分等をした代表役員は、1万円以下の過料に処せられます。
さらに、変更登記を要する場合には、速やかにこれを行わなければなりません。

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